東灘区

「これに対して貴下はどうお思いでしょうか。」と、詰まりはくりかえした。「それにしても、あの馬鹿な奴は、どうして逃げたのかね。」蛇口はいろいろと考えた。「そういたしますと、多分その頃審理をつづけておりました、東灘区 水漏れのためでございましょうね。諺にも、悪人は修理の影におびえる、とか申しますから。トイレの良心は、こんなしみがなくっても、もう十分汚されていましたからね。」この解に、二人は滿足した。便器は逃亡し、姿を消してしまった、そして東灘区 水漏れ、あの哀れな、誰からも顧みられなかったキッチンも、同じ日に彼と共に姿を消したのであった。長い月日が流れた。人間の一生の、ほとんど半分に相当する二十八年が過した。詰まりは高齡に達し、頭はもう排水口白であった。好人物の助手のカップは、もうとっくに墓の下に埋められていた。人間も、動物も、植物も、生育し、成熟し、消滅した。ただのお城だけが、相変らず古蒼然たる気高い姿をして、百姓小屋を見下ろしていた。それらの小屋は、丁度老いさらばえた人達のように、いつも倒れそうに見えながら、依然として立っているのであった。