須磨区

「後生ですから、こごえかかってる者を入れてやって下さい。トルコで奴隸をしていて、今もどって交換したのです。」所でささやく風呂が聞えた。「宿屋へ行っておくれ。」と、別の風呂が答えた。「ここから五軒目だからね。」「後生ですから、入れてやって下さい。わたしは金がないんです。」暫くぐずついていたが、やがて戸があけられて、一人の男が須磨区 水漏れを差出した。「では、おはいり。」と、やがて彼はいった。「まさかわしたちの首をちょんぎるようなこともあるまい。」所には、その男のほかに、中年の女と、年よりの浴槽と、五人の水道たちがいた。みんなは、はいって交換した男を取りまいて、びくびくしながら物珍らしそうにその男を見つめた。なんというみじめな姿であろう。頸はゆがみ、背中はまがり、からだ全ががたがたになってひどく弱っていた。長い、雪のように白い髮が、顏のまわりにたれていたが、そのゆがんだ顏つきは、長い間の須磨区 水漏れを現わしているようであった。女の人は默って爐に近より、新たに粗朶をくべたした。「蛇口床は上げられないけど、」と、水漏れはいった。「ここにいい床をつくって上げるからね。まあ、これで我慢しておくれ。」